基礎知識2024年03月05日
成年後見制度をまるっと理解!|不安なときは経験豊富な専門家に相談
身寄りのない人や認知症などによって判断能力が低下した方の代理として、財産管理や身上監護を行う人を後見人といいます。後見人の役割は対象者の生存中と限られており、亡くなった後の手続きなどは担えません。今回は、後見人の役割と権限の範囲を解説します。
【もくじ】
1.成年後見制度とは?
成年後見制度は、加齢や障害により自ら物事を考えて決めることが難しい人を保護する制度です。預貯金や不動産の管理、遺産相続といった財産管理、介護福祉サービスや施設・病院の利用契約といった身上保護など、正しく判断できなければ不利益を被る恐れのある事柄を、代理人が行います。後見人には2種類あります。それぞれの違いを、以下で詳しく見ていきましょう。
1-1.法定後見
法定後見は、家庭裁判所が成年後見人を選任する制度です。対象者の認知症・障害の度合いに応じて「補助」「保佐」「後見」いずれかの類型が割り当てられ、最適な代理人が選ばれます。補助人・保佐人・成年後見人は、法律行為の代理や同意、不利益な法律行為の取り消しなどを行い、対象者を支援します。法定後見の手続きができるのは、家族か四親等以内の親族とされており、住民票の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。本人の判断能力を医学的に判定する「鑑定」にかかる費用として10~20万円程度がかかるほか、登記手数料や審判書の送付料などの約2万円の事務的な経費が必要です。
1-2.任意後見
任意後見は、自分自身の思考・判断能力が低くなったときに備え、支援内容と支援者をあらかじめ自ら決めておける制度です。法定後見と違い、本人の親族や友人が後見人になれる点も、任意後見の特長のひとつです。任意後見の手続きを行うのは、本人です。本人と後見人が公証役場に出向き、作成を依頼していた「任意後見契約公正証書」に署名すれば、任意後見契約が成立します。申し立てに必要な費用は1万円以内、裁判官が「鑑定」を行うと判断した場合には、10~20万円程度の費用が発生します。
1-3.身寄りのない人と後見人
法定後見と任意後見のいずれにしても、制度の利用者の中には、日頃から自身を助けてくれる他者が身近にいない人もいます。いわゆる、身寄りのない人です。そういった方にとって後見人は心強い存在なのですが、お亡くなりになった後も安心というわけではありません。次の章で詳しく解説します。
2.身寄りなき人の没後
本人の没後の対応も、後見人を頼れるのか。この問題を考える前に、身寄りのない方が亡くなった場合のお葬儀について理解しておきましょう。
2-1.誰が葬儀を行う?
日本では没後、必ず火葬・埋葬を行わねばなりません。もし故人に葬儀をあげてくれる家族・親戚などの身寄りがない場合、一般的には、没地の自治体が戸籍をもとに親族を探し出し、火葬・埋葬を依頼します。それでも親族が見つからないことや、判明しても対応を拒まれるケースもあります。そういった場合は、自治体がご遺体の引き取りと火葬・埋葬を行うことになります。市区町村にもよりますが、自治体が執り行う際は、法律に則った最低限の火葬・供養となり、葬儀はなされません。稀に、故人にゆかりのあるご近所さんや入居先の施設などが、葬儀を引き受けてくれることもあります。
2-2.葬儀の費用は?
仮に身寄りのない故人のご遺体を親族等が引き取って葬儀をする場合、その費用はどれくらいかかるのでしょうか。基本的には亡くなった方の財産を葬儀費用に充てることになりますが、財産自体が足りないこともあります。そんなときは、以下の給付制度が便利です。
◎葬祭給付金
故人が健康保険などに加入している場合に、葬儀費用として受け取れます。公的医療保険の種類や申請者と故人との関係に応じ、金額は異なります。
◎埋葬給付金
故人が健康保険などに加入している場合、埋葬を行った方が受け取れる埋葬費用の給付金です。
◎葬祭扶助制度
生活保護を受けていた方が亡くなった場合に、自治体から火葬・埋葬のための最低限の金額が支給される制度です。利用対象は2ケースあります。1つ目は、故人の身内(遺族・親族)以外が葬儀を行う場合。2つ目は、葬儀をする身内自身が経済的な理由で葬儀費用を出せない場合です。
◎葬祭給付金
故人が健康保険などに加入している場合に、葬儀費用として受け取れます。公的医療保険の種類や申請者と故人との関係に応じ、金額は異なります。
◎埋葬給付金
故人が健康保険などに加入している場合、埋葬を行った方が受け取れる埋葬費用の給付金です。
◎葬祭扶助制度
生活保護を受けていた方が亡くなった場合に、自治体から火葬・埋葬のための最低限の金額が支給される制度です。利用対象は2ケースあります。1つ目は、故人の身内(遺族・親族)以外が葬儀を行う場合。2つ目は、葬儀をする身内自身が経済的な理由で葬儀費用を出せない場合です。
2-3.納骨はどうする?
身寄りのない方が亡くなると、多くの場合、その遺骨や遺品の整理をする人がいません。その際は、自治体が管理を行います。自治体によって期間に差はありますが、一般的には5年ほど保管したのち、無縁塚へ。合同埋葬なので、納骨後は遺骨を取り出せません。
ここまでお読みになって、「あれ?」と気づかれた人もいるでしょう。そう、後見人が出てきていません。身寄りのない方の葬儀に関して、後見人ができることはあるのでしょうか。
ここまでお読みになって、「あれ?」と気づかれた人もいるでしょう。そう、後見人が出てきていません。身寄りのない方の葬儀に関して、後見人ができることはあるのでしょうか。
3.後見人に葬儀をまかせてもよい?
結論からいうと、後見人が葬儀を行うことはできません。生前の施設利用料金や医療費用などの支払いは行えますが、原則的に、葬儀は執り行えません。原則として被後見人の方が亡くなった時点で、後見人の業務は終了するからです。ただし、家庭裁判所の許可を得れば、後見人は火葬・埋葬を行える場合があります。以下で主な要件2つをご紹介します。
◎成年後見人が火葬・埋葬を行う必要性がある
故人の相続人と連絡が取れない、あるいは相続人がご遺体の引き取りを拒絶している場合、家庭裁判所に申請すると、火葬・埋葬を行える許可が下りることがあります。
◎相続人の意思に反しないといえる
平たくいうと、故人の家族や親族が後見人による火葬・埋葬に反対していない場合です。が、実際には身内全員の同意を得ることは困難のため、明らかな反対をする相続人がいない場合に許可が出されます。さらに具体的にいうと、故人の相続人が見つからない場合に許可運用がなされることがほとんどです。
なお、家庭裁判所の許可を得られるのはあくまでも「成年後見人」であり、保佐人と補助人に権限はありません。また、許可が下りたとしても、行えるのは火葬・埋葬のみ。後見人が葬儀や供養を行うことは、やはりできないのです(ただし宗教儀式によらない通夜・告別式は可能とされる場合あり)。
◎成年後見人が火葬・埋葬を行う必要性がある
故人の相続人と連絡が取れない、あるいは相続人がご遺体の引き取りを拒絶している場合、家庭裁判所に申請すると、火葬・埋葬を行える許可が下りることがあります。
◎相続人の意思に反しないといえる
平たくいうと、故人の家族や親族が後見人による火葬・埋葬に反対していない場合です。が、実際には身内全員の同意を得ることは困難のため、明らかな反対をする相続人がいない場合に許可が出されます。さらに具体的にいうと、故人の相続人が見つからない場合に許可運用がなされることがほとんどです。
なお、家庭裁判所の許可を得られるのはあくまでも「成年後見人」であり、保佐人と補助人に権限はありません。また、許可が下りたとしても、行えるのは火葬・埋葬のみ。後見人が葬儀や供養を行うことは、やはりできないのです(ただし宗教儀式によらない通夜・告別式は可能とされる場合あり)。